2021年の夏休み。8月初旬に1週間の連休になることが決まったが、特に予定もなかった。
この猛暑の中、休日もバイクで出かける気にもならず、家でダラダラと過ごすことが多くなっていた。そんな状態だったが、せっかくの夏休みまでダラダラと日々があっという間に過ぎ去っていくのは嫌だと思い立ち、パソコンで地図を見始める。
せめて数日だけでも、中々行けなさそうなどこかへ行こうと決断した。くだらないが、それが富士山に登る計画を立てるようになった理由であった。
・2021年7月 計画編
私は特に登山やハイキングが趣味という訳ではないため、高山病など体調面で若干の懸念もあったが、やはり一生に一度は富士山のてっぺんまで登ってみたいという思いもあり、今年の夏は富士登山に決定することにした。
当時の自宅から富士山五合目の登山口までは、一般道での移動でも片道2~3時間であり、山頂まで行って自宅に帰って来るにも、2~3日あれば実現可能だ。まさに今回の夏休みを利用して行く「中々行けなさそうなどこか」にぴったりな場所が富士山であったのだ。
五合目までの移動手段は、所有するセカンドバイク「スーパーカブ110」で行くことにした。
早速、ネットで富士山に関する情報を集め始める。この前年の2020年は山開きしていなかった富士山であるが、今年は一部の登山ルートや山小屋の閉鎖はあるものも、2019年以前と同様に、7月から山開きがされていて登頂できる様子だ。
続いて登山ルートを検討する。
富士山頂へ行くためには、以下4つの登山ルートが存在することが分かった。
- 吉田ルート
・・・ 山梨県側(富士山の北側)から山頂を目指すルート。富士スバルラインの五合目から出発する最も登山者が多いルートである。
登山口の標高:2,305m
登山者数(2021年度):54,392人 - 須走ルート
・・・ 富士山東側の県境付近にある須走口五合目を出発して山頂を目指すルート。
登山口の標高:1,970m
登山者数(2021年度):6,411人 - 富士宮ルート
・・・ 静岡県側(富士山南側)から山頂を目指すルート。4つの登山ルートのうち、最も標高の高い富士宮口五合目から出発するため、山頂までの距離が短いルートである。
登山口の標高:2,380m
登山者数(2021年度):11,409人 - 御殿場ルート
・・・ 静岡県側(御殿場市の富士山南東側)から山頂を目指すルート。4つの登山ルートのうち、最も標高が低い御殿場口新五合目から出発するため、山頂までの距離が長いルートである。
登山口の標高:1,440m
登山者数(2021年度):6,336人
調べ始めて初めて分かったことだが、同じ「五合目」と称していても御殿場口新五合目と富士宮口五合目の標高差が約1,000mもあることに気づいた。いや、御殿場口は「新」五合目だから、そもそも五合目ではないのか…など、色々下らないことを考えながら、登山ルートを検討する。
個人的に各登山口のメリット、デメリットをまとめると以下の通りとなった。
- 吉田ルート
(メリット) 登山口の標高が高く、登山の難易度が低い。
(デメリット) マイカー規制あり。五合目にアクセスするには麓の駐車場でシャトルバスに乗り換える必要がある。
最も登山者が多いルートのため、混雑して登りにくかったり景色が楽しめない可能性がある。 - 須走ルート
(メリット) 他の登山者が少なく、マイペースで登れそう。
(デメリット) マイカー規制あり。五合目にアクセスするには麓の駐車場でシャトルバスに乗り換える必要がある。 - 富士宮ルート
(メリット) 登山口の標高が高く、登山の難易度が低い。
(デメリット) マイカー規制あり。五合目にアクセスするには麓の駐車場でシャトルバスに乗り換える必要がある。
吉田ルートの次に登山者が多いルートのため、混雑して登りにくかったり景色が楽しめない可能性がある。 - 御殿場ルート
(メリット) 4つの登山ルートのうち、唯一マイカー規制がないため、麓の駐車場にバイクを停めてダイレクトに出発できる。
他の登山者が少なく、マイペースで登れそう。
(デメリット) 山頂までの距離は断トツで長く、登山に時間と体力を要するうえ、道中の休憩施設も乏しい。
地図を見ても「御殿場ルート」は明らかに最も過酷そうだった。でも、個人的には御殿場ルートで登りたいと思い、自ら、いばらの道を選択することにした。
最も登山者が少ないルートであることもメリットだが、一番大きな理由はマイカー規制がないことだ。バイク乗りとして、この御殿場ルートを選択することで、富士山を自分のバイク+足のみで登頂したという大きな達成感が得られると考えたからだ。
登山ルートを決めた後は、天気予報を確認。夏休みは1週間後のため、予報通りにはいかないかもしれないが、それほど悪い予報ではなさそうだ。土・日曜日は避けるとして、平日で一番天候が良さげな日が8月3日(火)~4日(水)だったので、この日に仮決定。
2021年の富士山山開き期間中は、山小屋の宿泊予約が必須だったため、続いて山小屋を予約する。
御殿場ルート上にある山小屋は元々数が少ないうえ、2021年は閉鎖中の所もあって、七号四寸にある「わらじ館」、七号五寸の「砂走館」、八合目の「赤岩八合館」の3か所のみの様子。その中から「砂走館」に宿泊しようと思い、電話を掛ける。
この時で登山の約1週間前であったが、十分に空きがあるとのことで問題なく予約できた。天候不良などの場合でも、直前に変更可能ということでありがたい。
私の登山経験は、バイク旅の延長的な感じで関西地方の低山や、関東地方だと東京都/山梨県境の雲取山(標高2,018m)に登ったことはある。最近のやる気のないダラダラ生活の中でも、週に2日ほどは軽い運動も行っているため、少なくとも平均的な体力はあると思っている。
後は己の体力を信じて、御殿場ルートに挑むのみだが、念のため登山行程には余裕を見て、早朝出発の1泊2日で旅程を組んだ。山小屋の方には全然大丈夫だよと電話で言われたが、2日目に体力が尽きた場合は、同じ山小屋にもう1泊することも想定している。
以上で、単独富士登山の計画は完了。次に準備編に入る。
・2021年8月1日(日) ~ 2日(月) 準備編
季節は8月に変わり、夏休み2日目を迎えた8月1日。朝からセミが全力で鳴いていて蒸し暑いが、この日と次の日の2日間でゆっくりと準備することにした。
部屋の奥底から、アウトドア用品を引きずり出す。これまでのバイク旅でキャンプ用品などはある程度揃っているため、この中から登山に持って行くものを抽出する。
宿泊は山小屋で寝具はあるとのことだったため、テントは不要。バイク乗車中、登山中ともに雨と暑さ対策が必須になって来るため、衣類を中心にまとめて、足りないものは近所のショッピングモールへ買いに行くことにした。
今回持って行くものは以下の通りとなった。
ほどんどは既に家にあったので、暑さ対策用品を新たに少し買い足したくらいだ。
【2021年8月富士登山 携行品】
- サングラス
- 帽子
- タオル
- 雨具(カッパ上下セット+シューズカバー)
- 虫よけスプレー
- ネックウォーマー ・・・ 暑さ対策の夏用
- 軍手
- 反射材
- カラビナ類、S字フック
・・・ アウトドアシーンで何かと役に立つので、とりあえず携帯する。 - ヘッドライト+予備電池
- ポータブルラジオ
- アウトドア用マルチツール(十徳ナイフ)
- ボールペンと紙
- 強力接着剤
・・・ 衣類の破れなどに応急対応できるため、アウトドアにはいつも携行している。 - 折りたためるプラスチック水筒
- 冷感スプレー ・・・ かさばるので登山中はバイクに置いていく。
- 冷感シート
- エアー枕
- アルミ収納袋(水・食料の収納用)
- ビニール袋類(衣類や現地で出たゴミの収納用)
- 充電コード
- モバイルバッテリー×2 (10,000mAhと8,000mAh)
・・・ 登山中の写真、ビデオ撮影は全てスマートフォンで行うため、多めに携行。 - 水(500mL×2本)
・・・ 1日目の山小屋までの分。バックパックに入るなら、道中で+1Lくらいは追加したい。 - 防寒用品(パーカーと膝サポーター)
- 歯ブラシ、歯磨き粉
- 医薬品類
- 衛生用品
- 日焼け止め
- ポケットティッシュ、ウエットティッシュ
- 着替え(2日分)
- ヘルメット(バイク用)
- バックパック(容量21L)
合計で32品目、重量は約5kgとなった。
今回、夜間の登山は行わない予定のため、「7」~「14」は予備・緊急用として持って行く。結果的に、「15」~「16」は大して役に立たなかったため、持って行かなくても良かったと今では感じている。
ヘルメット(バイク用)以外は、バックパックに全て詰め込むことができたため、このサイズなら難なく登山に携行できそうだ。
出発2日前(8月1日(日)の夜には、概ね登山準備が完了できたので、軽めの運動をするために近所を走ったりして、体の準備も行っておく。
翌日(8月2日(月))、暇になったので富士山を見に行こうと思い、山中湖までスーパーカブ110で行ってみた。山中湖までなら私の自宅からゆっくり向かっても、片道1時間半くらいで到達できる。体とバイクの準備には丁度良い距離だ。
この日は晴れだったが、富士山の上は雲がかかっていて、その姿を見ることはできなかった。明日と明後日は良い天気であることを願いたい。
午後、家に帰ってきて荷物の最終確認をする。カ〇リーメイトとメ〇トスを追加した以外は特に変わっていないが、抜かりがないことを確認できたので、後は明日の早朝から満を持して出発するだけだ。
私はこれまでのバイク旅で47都道府県を制覇し、離島を除く最北端~最南端への到達を経験しているが、日本最高所の標高3,776mへはまだ未知の世界だ。明日からまた新しい景色に出会えると思うと、楽しみで仕方がない。それは、私が18歳の時に初めてのバイク旅で大阪から鹿児島を目指した時の感覚に似ている気がして、どこか懐かしい気持ちにもなった夜でもあった…
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