1日目は富士山の七号五寸にある山小屋「砂走館」に宿泊して、何とか21時頃には就寝できた。
2日目の未明、時刻はまだ午前4時だが、他の宿泊者達が起きて外に出ている様子が見えた。どうやら、もうすぐ日の出の時間のようだ。
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・2021年8月4日(水) – 2日目
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東の空が少しづつ明るくなっていく。青い空とオレンジ色の空が交わり、山小屋のガラス窓に反射して鮮やかな色を作り出している。
真夏とは言え、ここは標高3,000mの世界。外気温は10℃を下回っていて、歯がガタガタするほどの寒さだが、その寒さを忘れさせてくれるほどに素晴らしい景色が眼下に広がっていた。
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こうして景色を見ている間にも空は更に明るくなる。
いよいよ、富士山で見る日の出「ご来光」の時間だ。
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東の空に雲は少なく、こうして無事にご来光を拝むことを果たした。ものの数分で太陽が完全に姿を現し、気が付けば辺りは昼間と同じくらい明るくなっている。
山小屋の中に戻り、朝食のカレーを食す。食べ過ぎて富士山でお腹を壊す訳にはいかないので、朝は1杯だけ食べれば十分だ。
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山の朝は早い。午前5時過ぎ、カレーを食べてのんびりと支度をしていたら、山小屋に停まっていた他の宿泊者たちは皆出発していたようで、最後の1人となってしまった。
山頂まではまだまだ先は長いが、せっかくの一人旅だ。マイペースで淡々と登っていきたい。
午前5時50分、2日目の登山がスタート。果たして今日中に無事に帰れるのか、懸念はあるが、ご来光も拝めた訳だし、とりあえずはこの富士登山を精一杯楽しむこととしよう。
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まずは次の山小屋「赤岩八号館」を目指して歩みを進める。このあたりは赤い土と岩がゴロゴロした風景に、背の低い草がわずかに生えている。
山頂は目の前に見えているが、思ったよい遠いようで、なかなかその距離が縮まらない。
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山小屋に近づくにつれて、地面が赤色になってくる。まさに「赤岩八号館」という名前にぴったりな風景だ。赤土と青空のコントラストが美しい。
山小屋「砂走館」を出発して40分ほどで、御殿場ルート最後にして最大の山小屋である「赤岩八号館」前に到着。ここは七号九寸で、標高は3,290m。ついに山頂までの標高差が500mを切った。
ここで販売されている500mlの水・ジュース類は500円(税込)。ス〇ーバックスのコーヒーよりも高価で、かなりの高級品だ。
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昨日の睡眠で体力が回復したのか、まだ疲労感は全くないので、赤岩八合館をノンストップで通過。ペースを上げ過ぎないように注意しながら、山頂を目指してだたひたすらに突き進む。
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朝の時間帯だからか、昨日と違って他の登山者たちの姿もちらほら確認できる。それでも、この年は登山者が大幅に少ないらしい。
泊まった山小屋のスタッフさんは、富士山に何十年も連続して登っているようだが、近年は登山ブームらしく、短い夏のシーズンは人でごった返すらしい。山開きしなかった2020年夏を経て迎えた2021年の富士山は、まるで20世紀の古き良き時代の富士山を見ているようだと言っていた。
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その昔、昭和の時代には富士山の山頂までバイクで登った先人たちが存在したようだ。
その中でも、山梨県在住の鍋田進さんが1963(昭和38)年8月4日にスーパーカブで登ったのがバイクでの初登頂とされている。規制が厳しくなった今では、もう二度とバイクで山頂には行くことはできないだろう。
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※本田技研工業 社報「フライング」第5巻より
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それから50年近くが経過し、自動車の形や登山者の服装は変化したが、富士山とスーパーカブの姿はほとんど変わっていない。
そして本日は奇しくも8月4日。私も御殿場口新五合目までではあるが、スーパーカブで富士山を登って来た。48年前に鍋田さんがスーパーカブのハンドルを握りながら見た景色と同じ景色を見ているのだと思うと、何だか達成感を感じて嬉しい気持ちになった。
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そんなことを考えているうちに、辺りは巨大な岩が増えてきた。もし、あの巨岩が動いて落ちてきたら…ひとたまりもないだろう。
急な坂を上がることも多くなったが、やがて鳥居が見えてくる。あの鳥居をくぐれば、御殿場ルートとお鉢巡り登山道との合流点に到着だ。亀のような歩みで、ここまで延々と登ってきた御殿場ルートもいよいよ終わりを迎える。
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山小屋「砂走館」(七号五寸:標高3,090m)を出発してから約2時間20分、午前8時過ぎに富士山の火口を一周する「お鉢巡り」の登山道との合流を果たす。
お鉢巡りに入ると、これまで登って来た御殿場ルートとは風景が一変する。視界の正面に富士山の最高所である剣ヶ峰、右側に富士山の火口内部、左側には下界の街と樹海が眼下に広がり、ここまでの過酷な道のりを登った達成感を十分に感じられる風景だ。
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お鉢巡りルートに入ると、外からは見ることができない火口の内側を覗くことができる。
長い冬の間に降り積もった雪の量が多いのだろう。8月であるにも関わらず、僅かながら雪が残っているのも確認できる。キモい自撮り写真なども交えながら、富士山の最高地点である剣ヶ峰の頂へ向けて、更に歩みを進めていく。
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日本最北端の街である北海道稚内市には、日本最北端のマ〇ドナルドなど、様々な最北端が集まっている。それと同じく、富士山の山頂付近には日本最高所の売店など、様々な日本最高所が集まっているのだ。
郵便局は休業中であったため利用できなかったが、公衆トイレが利用可能だった。
有料で利用料は1回300円と高級だが、これも富士山に来た記念として、日本最高所で用を足すことにした。中に入ってしまえば、男子用は小便器×3と大のブースがあって、普通の公衆トイレと大きな違いはなかった。
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公衆トイレから10分ほど歩くと、手すりが欲しいくらいに急な登り坂が目の前に現れる。
この急坂を登れば、そこは念願の富士山頂。昨日から約24時間続いた登山もいよいよ終わりだ。ラストスパートをかけて、この急坂に挑む。
この坂の先に建っている茶色い建物は、気象観測施設だった。富士山頂(剣ヶ峰)とほぼ同じ場所にあり、日本最高所であるという地の利を活かして、様々な気象データを観測しているようだ。
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観測施設の横にある階段を登ると、そこはもう標高3,776mの世界。ついに富士山頂に到達したのだ。
日本国内でここよりも高い場所は他になく、「日本最高所富士山剣ヶ峰」の石碑を見て、それを実感することができる。
普段は下から富士山を見ているが、今日はその逆で、富士山から下を見下ろしている。その達成感は、私がこれまでの旅で到達した様々な場所よりも大きいものだった。何よりも、長い距離を自分の足で登って来たと言うのが大きいだろう。
天候にも恵まれ、眼下には360度のパノラマ風景が広がる。山頂から撮った写真をたくさん載せておくことにしよう。
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まるでシルクロードのように石積みが続く
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山頂には10分ほど滞在し、達成感に浸りながら、その雄大な風景を目に焼き付けた。
同じく単独で登頂して来たおじさんに声を掛けられ、ありがたいことに写真を撮っていただいた。この素晴らしい青空の下で、さっきの自撮り写真よりも何倍もマシな記念写真も撮れて、もう思い残すことはない。下山を始めよう。
これからは一歩ずつ標高を下げていく。スーパーカブ110の停まっている御殿場口新五合目を目指すのだ。
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