2021年夏・単独富士登山の旅 – その2(自宅出発から山小屋まで)

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前回の計画準備編で、以下の行程を組んでいる。
幸いにも天候は良好な予報で、予定通り出発できそうだ。

1日目:早朝に自宅から登山口(御殿場口新五合目)までスーパーカブ110で移動。
 午前9時頃に登山開始、道中で持参した昼食を食べて、夕方16時頃には七合五寸にある山小屋「砂走館」へ到着できるように登る。山小屋で汗を拭いて夕食を食べ、20~21時には就寝したい。
2日目:山小屋「砂走館」からご来光を見る。朝食を食べ、早朝から念願の富士山頂へアタック。
 比較的天候が良いことが多い朝のうちに3,776mの頂に立ち、その後は火口を時計回りで一周(お鉢巡り)してから下山開始。体力や疲労に問題がなければ、一気に御殿場口新五合目まで下山し、その日のうちにスーパーカブ110で帰宅する。
3日目(予備日):自宅で休息と後片付け。
 もし下山中に体力が尽きていた場合は、行きと同じ山小屋「砂走館」に再び宿泊し、3日目の朝に下山する。2日目に何とか御殿場口新五合目まで戻ったものの、力尽きていて長距離の運転が危ない場合は、御殿場市内に宿泊し、3日目の帰宅とする。

・2021年8月3日(火) 1日目

前日は早く寝たかったが、気分が高まって遠足前の小学生みたいな感じになり、結局は6時間程度の睡眠時間となってしまった。
朝起きると天気も快晴で、自宅前の気温もまだ25℃で涼しい。気分よく愛車のセカンドバイク「スーパーカブ110」に荷物をくくり付けて、出発準備を行う。

午前6時10分:自宅を出発。国道413号(道志みち)で西へ走る。
週末になるとスポーツカーや大型バイクがバンバン飛ばしているこの道も、平日早朝なら交通量が少なくて静かで、スーパーカブ110の小さなエンジン音を響かせながら、少しづつ富士山に近づいていく。

山中湖から先はアップダウンが激しい山道となり、スーパーカブ110の非力なエンジンでは何度も登り坂で失速しながらも、順調に山を越えていく。富士スピードウェイや陸上自衛隊駐屯地の前を通過して静岡県道23号(御殿場富士公園線)に入ると、これからその頂を目指す富士山が目の前にその姿を現す。
ちょうど山頂付近にのみ雲がかかっていて残雪のように見えるが、ここから見る限り雪はなさそうだ。

静岡県道23号を登って行くと、富士山一合目の「馬返し上」という場所を見つけて、スーパーカブ110を停める。
新五合目まではスーパーカブ110の力を借りるが、もう富士登山は始まっているのだ。麓では既に蒸し暑くなっていたが、ここは標高1,040mの森の中、木漏れ日と吹き付ける爽やかな風が心地良い。

一合目から更に標高を上げていく。徐々に急な登り坂になり、スーパーカブ110は再び失速して原付並みの速度に落ちながらもゆっくりと確実に登っていく。
やがてトンネルが見えると、その手前を右折する。この先は県道152号(富士公園太郎坊線)となり、新五合目の登山口まで最後のアプローチとなる。

県道152号を少し進むと、道路脇に「富士山御殿場口新五合目」の駐車場案内看板を発見したので、その看板を見る。
バイク乗りの宿命として、車よりも停める場所が少なくて困ることがあるのだが、第2駐車場の入り口付近に小さく「二輪」の文字が。この看板のおかげで、第2駐車場のバイク用区画へスムーズにスーパーカブ110を駐車する。この時点で四輪車はそれなりに停まっていたが、バイクで来た登山者は私だけのようだ。

ここからは移動手段をスーパーカブ110から己の足への切り替えるため、バイクに置いていく荷物と、登山に携行する荷物を仕分ける。そして、靴ひもを結び直してバックパックを背負い、第2駐車場から少し登った所にある御殿場口新五合目の登山口へ歩いて向かう。
駐車場と登山口の間には、比較的新しめの施設「Mt.Fuji TRAIL STATION」があり、ここで登山道の状況などの情報を確認することができる。そして、御殿場口新五合目の登山道入り口に到着すると、運動会でよく見る白い簡易テントがたっている。ここで受付(登山届け)を行う必要があるようだ。

体温測定などの体調確認と山小屋の予約有無を聞かれ、問題なければ保全協力金1,000円を支払って、記念バッジと緑色のリストバンドを貰い、登山が許可されるようだ。
富士山では登山ルートを分かりやすくするため、ルート別に色分けされている。御殿場ルートは緑色であるため、登山道中に所在する案内看板なども全て緑色で統一されている。登山者も受付で渡されたリストバンドを付けておく必要があるため、どのルートで登ってきたかが判別できるようになっている仕組みになっている。
黄色:吉田ルート
赤色:須走ルート
青色:富士宮ルート
緑色:御殿場ルート

受付を済ませた後、登山道の入り口に自動販売機があったので、ペットボトルのコーヒーを210円で購入。下界よりも少し高い金額に設定されている。この先、上に登っていくにつれてどんどん高くなっていくのだろうか… 子供の頃に遊んでいたRPGゲームのダンジョンで、奥に進むほどアイテムの値段が高くなっていくのを思い出した。

登山道に入ると、地面は一面砂地になる。10分ほど登った場所に「大石茶屋」という休憩施設があり、ここまでは一般の観光客?みたいな風貌の人々も見受けられ、ハイキングコースといった様子だ。

御殿場口新五合目から大石茶屋まで距離は僅かだが、標高差が約70mもあり、中々足に負担がかかる。大石茶屋で杖のレンタルを発見したので、500円を支払って登山のお供にすることにしたが、これが大正解。古いスキーのステッキだったが、これがあることで足への負担が減り、ゆっくりでも前に進むことができた。長いのでバイクに積んでいくのが難しいが、私のように登山経験の乏しい者は絶対に必要だと感じたのであった。

大石茶屋の標高は1,520m。午前10時を過ぎたこともあって気温は約25℃もあり、熱中症対策を油断してはいけない。500mlの水を飲み干した後、新たに水を購入して、いよいよ本格的な富士登山が始まる。
雲が現れたり過ぎ去ったりで、富士山頂は見えたり見えなかったりの繰り返しだが、曇ると一気に涼しくなって過ごしやすい。

道中は休憩を挟みながらも、亀のような歩みでノロノロと登っていくこと約1時間。御殿場ルートの登りと下りの交差地点である「次郎坊」(標高:1,920m)に到着。1時間で約400mもの標高差を登ってきたことが衝撃だ。
時折、おっちゃん1人が乗った建設用の重機のような乗り物が専用道を行き来している。どうやらあれで山小屋や山頂に物資を運搬しているようで、山頂の物価が高いのも納得だ。

引き続き、亀のような歩みでノロノロと登っていく。
しかしまあ、富士山の中で一番登山者が少ないルートとは言え、他の登山者は皆無で、遠くまで見渡しても数名いるかどうかだ。まさに何もないし誰もいないが、「道はただ延々続く」という表現がぴったりな場所で、奥田民生の名曲「イージュー★ライダー」が頭の中を流れる。

今日の富士山頂は、雲で見えたり隠れたりを繰り返す。
本当に何にもなくて、黒い砂の道が延々と続くだけなので、特に書くこともなくなってきた。ここからはたくさんの写真のみで、その道のりの長さを表現したい。

いつの間にか雲がなくなり、天気は快晴になっていた。
日差しが強くなるが、既に標高は2,500mを超えている。気温はだいぶ下がっているようで、それほど暑さは感じない。体力の減りが早くなっているように感じるのは、それだけ酸素が薄くなっているからだろう。少し休憩すると回復するが、少し登るとまだ疲れるの繰り返しだ。

登山開始から約3時間。ここまで登って、ようやく何かの建物が見えてくる。
「新六合目」(標高:2,590m)に到着。六合目小屋という建物があるが、無人なうえ、特に何かがあるわけではなかった。手書きで天気予報が書いてあるホワイトボードが掲示されていたが、7月31日から更新されていない。
唯一、公衆トイレは使用可能な様子で、野菜の無人販売所のように料金箱に300円を入れて使うシステムだ。トイレといっても水洗式ではなく、トイレットペーパーもないので注意したい。

六合目小屋の近くで昼食を取ることにした。バックパックから下界の街にあるファ〇リーマートで買ったパン類を取り出す。メロンパンの袋は、今にも破裂しそうなくらいパンパンに膨れ上がっている。
ここで初めて他の登山者が2名ほど通過していった。小屋の辺りでは一歩も立ち止まることなく、そこそこのペースで淡々と登っていった。恐らく、富士登山のベテランさんであろう。その方々とは対照的に、初心者の私はここで30分弱は休憩していた。

簡素な昼食で腹も満たしたところで、再び亀のごとき歩みで「新六合目」から「六合目」に向けて歩き出す。名前だけだと同じ六合目だが、その距離は約1km、標高差が約240mもある。富士山の〇合目は、どうやら「新」が付くと標高が低くなるみたいだ。
御殿場口新五合目なんかは他の五合目よりも標高が500~1,000mも低く、強引に「五合目」を称している気がする。あそこは五合目というより、三合目あたりから登山を開始していると思った方が良さそうだ。
この区間も単調な石と砂の登山道が続くが、山頂が近くなって来たのか、ここから見る富士山頂は麓から見えるような山の形ではなく、台形型に見える。ここから撮影した富士山頂の写真だけを見たら、富士山だとは分からないかもしれない。

ペースは更に遅くなり、約1kmの距離を1時間ほどかけて「六合目」に到着。
心配していた高山病などの症状や体調には全く問題なさそうなので安心だ。歩みが遅くなったのは最近の運動不足がたたったのか、足腰が悲鳴を上げていることが原因だろう。
そうは思いつつも、ゆっくりであれば全然進めたので、時速1キロメートルほどの速度で「六合目」から「七合目」に向けて登り続ける。

程なくして、標高は海抜3,000mを超えた。登山道は砂が少なくなり、ゴツゴツした岩石が中心になっている。こんな場所でも背の低い草?みたいな植物が生えていて、きっと生命力がとても強い植物なのだろう。
温度計を持っていなかったので正確な外気温は不明だが、恐らく20℃を下回っているだろう。8月の日中であるが、もう暑いと感じることはなく、突きつける風は少し寒いくらいだ。

登山道が歩きやすくなったのか、私の体力が復活したのかは不明だが、少しペースが上がったようで、思っていたよりも早く「七合目」(標高:3,040m)に到達する。この時点で時刻は16時ちょうど。本日宿泊する山小屋までは、あと30分もあればたどり着けるだろう。
七合目には「日の出館」という山小屋が建っているが、2021年シーズンは休業中。管理人はおらず、入り口も木の板で厳重に覆われている。

七号目で少し休憩して出発。日も少し傾いて来たので、最後の力を振り絞って、全力で七号五寸の山小屋を目指す。
周囲の雲よりも高い場所となった登山道を20分ほど歩いたところで、御殿場ルート最初の山小屋「わらじ館」(七号四寸)の前を通過。ここは御殿場口新五合目にあった「大石茶屋」以来、約6時間ぶりに営業中の施設だ。ここを予約して泊まることもできたが、カレーが食べ放題という理由で、私は次の山小屋である「砂走館」にしたのであった。

「わらじ館」を過ぎると、宿泊予約をした山小屋「砂走館」はもう目の前に見える。山頂まではまだまだこれからだが、私の気持ちはゴールテープの目の前まで走ってきたマラソン選手のごとく高ぶり、ラストスパートをかけて、亀からコアラくらいにスピードアップして登山道を登る。

16時20分、「七号五寸」(標高:3,090m)に到達したと同時に、本日の宿泊地である「砂走館」へ無事にたどり着く。ペースは登山地図に書いてある標準時間よりも少し遅かったが、疲労感は思っていたよりも少なかったのが幸いだ。
この場所はそこそこ大きな休憩所にもなっている様子で、南向きのパノラマ風景が広がっている。西は山中湖や丹沢山、南は沼津・三島の市街地とその先には伊豆半島、東には富士川や駿河湾、遠くにはかすかに静岡市街地も見ることができる絶景だ。私も山小屋に入る前にここで一休みして、ここまでの道すじを振り返った。

こうして1日目の登山を終え、「砂走館」にチェックイン。料金は2食(カレー)付きで1泊8,000円。夏の短い登山シーズン(7月10日~9月10日前後の約2か月)のみ営業しており、期間中に宿泊料金の変動はなく均一料金のようだ。
二段目の角の布団に案内されたので、ここで着替えを済まして荷物を整理する。富士山の山小屋の中は、どこも相部屋で雑魚寝(いわゆるドミトリー)となる。
水道・ガスがないため、当然、風呂やシャワーもない。トイレは隣にある公衆トイレ(宿泊者は無料)を利用する形となり、下界の一般的な旅館やホテルとは全く違う環境だ。この日は他に7~8名の宿泊者がいたが、砂走館の収容人数は70人となっているので、かなり余裕を持って宿泊できそうだ。

カレーを3杯食べてお腹いっぱい。ウエットシートで体を拭いて風呂替わりにしたあと、景色を見るために外に出る。
時刻は18時を過ぎ、やや薄暗くなっているが、日が傾いたおかげで富士山の大きな影を見ることができる。時間帯によって見える景色が違うのも富士山の魅力だろう。
北側(富士山頂方面)を見ると、これから先の登山道と、七号九寸に所在する次の山小屋「赤岩八号館」が見える。明日はここを通って、いよいよ富士山の頂に立つ。私が最初に一人旅に出てからもう10年になるが、未知の場所を目指すのは、やっぱりいつになっても楽しいものだ。
宿の消灯は20時とのこと。今晩も小学生気分で寝れないかもしれないが、今日の疲労感を武器にして、何とか20時半には就寝したい。

日が完全に沈むまでこの景色を見ていたかったが、気温がかなり低下して10℃を下回っているようで、すぐに寒くなってきた。
室内に戻って布団に入って暖を取る。布団で寝ころびながら、今日撮影した写真の整理や旅程を書いていると、いつの間にか日没を迎えたようで、外は真っ暗になっていた。夜になると美しい夜景が広がっているが、スマホのカメラでは良い写真が取れないのが残念だ。

こうして、とっても長く感じた富士登山1日目が無事に終了したのであった。
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