【バイク日本一周旅】南西諸島編(11~13日目)-沖縄の田舎と都会で

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・2015年3月5日(木) – 11日目

この旅の出発から早くも10日が経ち、気分もすっかり放浪中の旅人といった感じに仕上がっている。ダラダラ過ごした昨日とは違って6時半に起床し、沖縄本島の北西に浮かぶ小さな島、伊江島を目指して、早朝から交通量の多い国道58号線を北へ走る。

初日に上陸した本部港から、 午前9時発伊江港行きの「フェリーいえしま」にバイクごと乗船する。
伊江島までの直線距離は9kmほどで、約30分の短い船旅だ。島の北西部に米軍基地があるからか、「Y」のナンバープレートをつけた車や迷彩服を着た米軍関係者が乗客の多くを占めていた。

あっという間に島に到着。伊江島の人口は約4,500人で、伊江村という一つの村が島全体を占めている。昔ながらの集落と農地が広がっていて、沖縄の田舎といった風景だ。この島に颯爽?とバイクで上陸した私は、まずは適当に反時計回りで島を廻ってみることにした。
もっとも、伊江島は周囲約22kmの小さな島で、バイクで走ればものの数分で島内殆どの場所に行くことのできる。少し走っては停まりを繰り返し、島の隅々までを一日で巡った。

ニィヤティヤ洞→伊江島灯台→湧出(ワジー)→伊江島空港…と島内の見所を順番に見て廻った。結構ウロウロしているが、移動時間がそれぞれ数分で終わるので、時刻はまだ午前中、けっこう時間を持て余した感じだ。

この島には空港があった。伊江島空港は、その昔は那覇空港との定期便を運行していたようだが、現在は廃止されているようだ。個人機やチャーター便の利発着は出来るようだが、空港ターミナルは草木に覆われ、廃墟感をかもし出している状態になってしまっている。
そんな空港のすぐ脇に、謎の穴を見つけたので近くまで寄ってみた。

その穴の周りには、比較的新しい立派な柵で囲われていたが、案内板などの設置は無く、謎の穴を見たに過ぎなかった。地底の奥深く、未知の世界へと通じる穴かも知れない。そんな少年のような空想を勝手に思い巡らせながら、再び島の玄関口の伊江港がある、島の東側へバイクを走らせた。
時間を持て余しているので、伊江島名産のハイビスカスを見たり、伊江浜という砂浜でぼーっと海を見たりして過ごした。しかし、海と砂浜は透明感があってもの凄くきれいなのだが、この今にも雨が降り出しそうな曇天が全てを台無しにしてくれている。

そんな穏やかな場所であったのだが、ここでまさかの不審者が不意に現れた。軽トラから高齢の爺さんが降りてきたかと思うと、暫くして突然「ドリャワワワーーー」と、奇声じみた怒鳴り声を発したのである。
何かに向かってキレている様だ。私は少し離れた場所に居たので無視していたが、その爺さんは私のバイクから近い位置に立っている。もしもバイクに手を出しそうになったならば、私は自分のバイクと荷物を守るため、その奇声に向かって特攻していかなければならない。そう思い、覚悟を決めていたが、幸いにも、最後に軽トラのクラクションを高らかと鳴らし、爺さんは去っていったのであった。

平和な島だとは思うが、いつどこで危険が迫ってくるかは分からない。旅の途中、余り気を抜いてはいけないのである。さっきの爺さんと再び遭遇しないことを祈りつつ、伊江島のシンボルである城山へ向かった。
城山は標高172mで、オフスクレープ現象という自然現象で形成された山だ。オフスクレープ現象とは気の遠くなるような長い年月をかけて、古い岩盤が新たな岩盤に沈んでいく中で、その一部が剥がれ、新たな岩盤の上に古い岩盤が乗っかって岩山が形成されることらしい。この現象で形成された山は、なんと世界で唯一というから、実はとてもミラクルな山なのだ。

麓の駐車場から登山開始、山頂までは10分かからない程度ではあるが、延々と続く急傾斜の階段を登っていくので、結構体力が消耗される。
それでも、階段は柵付きで整備されているので、割と安心して登山することができ、難なく山頂に到着だ。

安定の曇り空だったが、山頂からはそれはそれは素晴らしい景色が広がっていた。伊江島には他に高い建物や山が一切ないため、まるで空を飛んでいるかのような感覚を味わうことができる。島の全てを一望でき、更には沖縄本島まで見渡せる。さすがに奄美諸島までは見えなかったが、私はこの城山の山上からこれまでの旅路を振り返り、一人感慨に浸った。

この島には日帰りで来たので、またフェリーに乗って帰る必要がある。伊江港まで走り、出航まで少し時間があったので、食事処でちょっとだけ贅沢な海鮮丼を食べてから、16時出発のフェリーいえしまで再び本部港に戻った。

帰路はこの旅でもう3回目となる夕刻の国道58号線を走る。この日は途中で雨も降ってきたので、那覇の宿に帰着した頃には20時を過ぎていた。暗闇のベッドに入ると、疲労感と少しばかりの達成感に浸りながら、一瞬で眠りに落ちた。

【11日目移動距離・出費】
那覇→伊江島→那覇:235km
出費:6,478円 ※累計:64,421円
(ガソリン代:908円、フェリー料金(本部~伊江往復):3,370円、食費:2,200円)

・2015年3月6日(金) – 12日目

12時間近く爆睡し、午前8時半に起床。ぼんやりとシャワー室へ向かい、汚い体を洗浄することから一日が始まった。外は土砂降りの雨、今日はバイクを出すことを諦め、4日目に突入して結構汚くなりつつあるベッドの布団に戻った。一昨日くらいに買ったパンの残飯を口にしながら、今日が暇にならないように、どう行動するかを考えた。
ここ沖縄に鉄道は通っていないが、「沖縄都市モノレール線(通称:ゆいレール)」というモノレールが那覇市内で運行されている。泊っている宿からも徒歩圏内に駅があるため、今日はこいつを移動手段にしたいと考えた。
外は朝から相変わらずの大雨の中、宿にバイクを放置して、持参した頼りない折りたたみ傘を差しながら、徒歩で最寄りの見栄橋駅に向かった。

駅の自動券売機で早速フリーパスを購入、「1日乗車券」と「2日乗車券」があったが、明後日までの予定を考えて48時間利用が可能な「2日乗車券」を購入した。
行く当ては無かったが、多くの観光客に混じってとりあえず那覇空港に向かい、飛行機を見たり昼飯を食べたりしたいと思い、終点の那覇空港駅までモノレールに乗車した。

那覇空港では空いている適当な店を見つけて昼飯を食べ、その後は雨の中、展望デッキの辺りでウロウロして過ごす。でも、何時間もいれるような場所でも無いので、再びモノレールに乗って、おもろまち駅まで移動した。
ここには「沖縄県立博物館」がある。博物館なら、数百円の入場料でそれなりの時間を過ごすことができるので、ゆったりと見て回り、出てきた頃にはもう夕方だ。帰りの移動は帰宅時間帯で混雑するモノレールに揺られ、途中の牧志駅で下車して、近くの店で夕飯を食べた。
こうなると完全に地元民と化しているなぁ…などと思いながら、沖縄の町に溶け込むような感じで宿に戻り、バイクの走行距離は0kmで、今日という一日が終わった。

【12日目移動距離・出費】
那覇市内:0km(バイクでの移動距離)
出費:2,924円
(モノレール運賃:1,200円、食費:1,514円、その他:210円)

・2015年3月7日(土) – 13日目

昨日と同じく午前8時半に起床。ぼんやりとシャワー室へ向かい、汚い体を洗浄するルーティンで今日も始まった。
今日は5連泊した安宿をチェックアウトする日だ。狭く薄暗いベッドにバイクは路上駐車で、お世辞にも居心地が良いとは言えない宿だったが、1泊1,000円で寝泊りできるだけでも、この貧乏旅行中の私にとっては非常にありがたい場所であった。午前11時、宿の主に挨拶をして、久しぶりに荷物満載になったバイクに跨って駆け出した。

天気は今日も曇りだったが、昨日の土砂降りを見て、雨が降ってないだけでもありがたいと思うようになった。昼飯を食べようと考えた時、一週間前に食べたタコライスの味を思い出し、もう一度そこに行くことにした。
やはり那覇からは結構遠くて、1時間半ほど掛かったが、13時には沖縄本島東海岸の街、金武町に到着して、再びあのタコライスにありつけて満足だ。帰りは西海岸を通って、また那覇まで向かいたい。

こうしてまた1時間半ほど掛けて、那覇市内まで戻って来た。せっかく沖縄に来てるので、沖縄のシンボルである首里城へ行きたいと思い、向かうことにした。
しかし、バイクの駐輪場がどの辺りにあるか調べられず、迷子になるのも嫌だったので、せっかくゆいレールのフリー乗車券を持っていることだし、「日本最南端の駅」である赤嶺駅前の駐輪場にバイクを停めて、モノレールで首里城へ向かった。沖縄は道路を走っているバイクの割合も多くてバイクに優しい街なのか、 赤嶺駅前の駐輪場は排気量に関わらず無料で停めることが出来たのでありがたい。

当時、モノレールの終点だった首里駅で下車し、徒歩で首里城に向かったが、時刻はもう17時を過ぎている。今から入場しても見学時間は限られてしまうので、入場券不要で行ける範囲だけを見てまわることにした。
お城だけあって高台にあるので、ここから那覇の市街地やその先の海までを一望することが出来たし、沖縄本島の南部は結構平らな地形で、そこに建物がビッシり立ち並んでいて、沖縄の人口密度の高さも良く分かる場所だった。

薄暗くなってきた所で首里城を後にして、バイクを停めている赤嶺駅へ戻った。ここからは再びバイクに跨り、すぐ近くの那覇空港に向かって、空港の有料駐輪場にバイクを停めた。
明日からは、ここ沖縄本島よりさらに南の島である宮古島を目指す。昔は那覇と宮古島や石垣島を結ぶフェリーが運航されていたようだが、今は全て廃止になっていた。残念ながら、那覇より南の島に自分のバイクで行くことは不可能だ。(貨物船にバイクだけを預けるという手段はあるが、時間も掛かり、費用も高額で現実的では無いので、現地で移動手段を借りる方が圧倒的に良いだろう…)

私はバイクから必要な荷物だけ降ろし、空港で夕食を食べて再びモノレールに乗車し、那覇の市街地へ向かった。週末の夜、サタデーナイトということもあってか、沖縄の都会は夜も人通りが多くて賑やかだが、大阪や東京とはまた違った賑やかさがあるような気がした。
いつもの安宿はもうチェックアウトしてしまっているので、今日は那覇の中心市街地にあるネットカフェに入り、一夜を明かしたのであった。

【13日目移動距離・出費】
那覇→金武→那覇空港→那覇:124km
出費:1,719円
(ガソリン代:699円、食費:1,020円)

【バイク日本一周旅】南西諸島編(14~16日目)-さらに南の島へ… に続く…