【バイク日本一周旅】西日本編(4~7日目:九州を快走)

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・2013年3月14日(木)-旅行4日目

 福岡のスーパー銭湯で夜を凌ぐこととなった夜、午前3時の営業終了前に強制的に起床して店を後にする。まだ真夜中だったが、もう過ごす場所はないのでバイクを走らせることとなった。

静まり返った福岡の市街地を抜けて30分ほど走ったが、眠い。そんな時に24時間営業のファストフード店が見えたので、朝食をとることに。500円ほどの朝食は、貧乏な少年にとっては贅沢極まりないものであったが、その分凄く美味く感じた。

佐賀県にある小さなダム湖「富士しゃくなげ湖」

朝食後、幸いにも眠気は治まってきたので、夜が明けかけた頃に再びバイクを走らせ、小さな峠を越えて佐賀県に入った。朝の天気は曇り時々雨ですっきりしないうえに、この日は寒い。天候は小雨であったが、外気温2℃で手足の先が凍りつくような冷たさだ。
午前7時台、佐賀の山沿いの国道は多くの車が猛スピードで私のバイクを追い越していく。通勤時間帯のためか、どこかで停まって休憩したい私とは逆で、皆、先を急いでいるのだろう。この道を行く車のスピードはとにかく速かった。ようやくダム湖の湖畔に駐車場を見つけたので、しばし休憩して震える体を温める。

曇天の佐賀を進む

佐賀県を縦断してもう直ぐ長崎県に入ろうとした頃、名前は忘れてしまったが、再び小さなダム湖を見つけた。その湖畔にバイクを止めていると、年式は恐らく昭和っぽい随分と古い小型バイクに乗ったおっちゃんと遭遇した。
「大阪から来て、バイクで旅をしている」など話をして、私は今18歳で、来月からは進学すると言うと、「良かったな まだ遊んでいられるな」と言われた。やっぱり社会人になると長い休みは取れないのか… と私はこの先の未来に少しがっかりしたが、おっちゃんに笑顔で見送られながら再びバイクで走り出すと、まあ後のことは取りあえず置いておこう! という気持ちになれた。

やがて国道から外れて、交通量皆無の林道へ入る。その道は永遠と続くくねくねした細い道だったが、単独走行で開放的な気分になれて、林道を抜ける頃にはいつの間にか長崎県に入っていた。

「 堤防道路」で県境越え

 この後のルートはフェリーを利用して熊本方面に向かうことは決めていたものの、どの港へ行くかはまだ決めていない。地図を見返して、まずはなんとなく雲仙の山の上を目指してから、2本のフェリーを乗り継いで鹿児島へ向かうことに決定。そこに行く途中の諌早湾には、堤防道路という海の上を走る道路があった。 海の上を走ると言うと、美しいエメラルドグリーンの海に架かる橋を想像しそうだが、曇天の3月、そこにはただ寒いだけの海が広がっていた。

雲仙の山の上ではうっすらと積雪している

堤防道路を渡ると、雲仙の温泉が有名な島原半島に入る。
少しばかり海沿いを走って、雲仙の山を一気に駆け上がった。山頂に着くころには気温も12℃くらいまで上がり、天気も待望の快晴に◎ 山の上から見る雨上がりの景色は澄んでいてどこまでも美しく、島根から続いた長~い雨天走行の苦労が報われた気がした。

島原半島の「仁田峠」から雲仙の山々と、遠くは熊本を望む

最短ルートで鹿児島を目指すべく、島原半島の南端にある口之津港から出ている島鉄フェリーに乗って、熊本県の天草に渡る。天草は小さい街だったが、そこで見つけたコインランドリーで溜まった洗濯物を洗う。最大3日間ものあいだ袋につめていた衣類は悪臭を放っていて、息を殺して洗濯機へ放り込む。お金が掛かるのと暇な時間が増えることを惜しみ、乾燥機は使わずに洗濯物をバイクにくくりつけてコインランドリーを発った。
この日は天草で1泊する予定だったが、この辺りのキャンプ場は少なく、料金も 高くて 躊躇していたところ、遠方ではあったが、鹿児島県の阿久根に列車の寝台に泊まれるライダーハウスを見つけたのでそこに向かうことにした。

コインランドリーから1時間弱走って、天草半島南端の牛深漁港までたどり着く。ここから鹿児島県へ渡る天長フェリーが出航しているのだが、その辺の漁港よりも小さく、乗船券の販売所は昭和の香りが漂う簡素な小屋がポツンと建っているだけで、何とも寂しい感じである。私はその小屋の横にバイクを停めて乗船券を求めた。どうやら最終便出発の10分前だったらしいが、受付のおばちゃんはのんびりしてて「もうすぐ出るから」といって乗船口に案内してくれて、無事に対岸へ渡るフェリーに乗ることができた。
この船に乗り遅れていたら、またどこかの寒空の下で野宿をしていたはず。コインランドリーで乾燥機を回していたら間に合わなかっただろう… その湿った洗濯物たちもフェリーを下船する頃にはほとんど乾いていた。

天長フェリーの最終便に駆け込む。澄み切った空に沈んでいく夕日が美しい//●\\
ピンボケ気味の風景写真。長島町「針尾公園」から

鹿児島県に上陸後は太陽が沈み、まるで時間の早送りをしているかのような勢いで辺りが暗くなっていく…
宿を予約している。先を急がねばならないが、美しい風景に魅せられて高台にある公園に寄り道する。その公園には、私と同じく旅をしていそうな野宿のライダーがテントを張っていた。特に話をすることはなかったが、3月の平日で多くの人が働いている中、 同じ境遇の者を見つけて何となく安心感を得る。公園の展望台から安いカメラを持った私の下手な撮影で、1枚のピンボケた風景写真を撮り、再び宿へと先を急ぐ。

深夜、誰もいない薄暗い通路を歩く

完全に太陽が沈んで夜になった頃、阿久根駅前の「あくねツーリングSTAYtion」に無事到着した。ここは変わった宿で、使われなくなった寝台特急が車両まるまるそのままの姿で駅の横に存在し、寝台に宿泊することができる。
宿泊費は1,500円。貧乏学生にはそれでも惜しい金額だったが、防寒に乏しい簡素なテントで凍えることを考えると、決して高くないだろう。寝台特急は貸切で、薄暗い通路はどこか不気味な感じだった。通路を歩いたときは猛烈にビビって漏らしそうになったが、小便もお化けも出ることは無く、穏やかにまた次の朝を迎える。

・2013年3月15日(金) – 旅行5日目


翌朝、列車に泊まったという物珍しさから、車内を徘徊して夢中で写真撮影

 今日もまた新しい朝がやって来る。早朝は曇りだったが、出発の頃には晴天に恵まれて気分も上々に走り出す。この旅も早いもので4日目、まだ見ぬ地をバイクで走ることができると考えると、楽しみで仕方がなかった。

鹿児島の山中にて。桜が咲き始めていた🌸

昼ごろには鹿児島の市街地に入り、ここで郵便局とバイク用品店に立ち寄った。とりあえず積んできた大量の荷物の整理と積み込みに毎日苦戦していたので、もう使わない荷物を家に送ることにした。そして、バイク用品店で荷物を固定するロープも購入。これで少しばかりは快適で安全に旅を続けられるだろう…

「指宿スカイライン」から鹿児島の街とうっすら桜島を望む

既に夕刻になってしまったが、さらに南下して枕崎市内のキャンプ場で1泊する予定を立てた。
道路は山の尾根伝いに走る「指宿スカイライン」を走る。この道路は有料で、車や大型バイクだと500円ほどの通行料金が掛かるが、私の乗っている125cc以下のバイクだと僅か60円で通行ができる。遠回りだったけど、お得感と山の上からの景色に惹かれてこの道を走った。

枕崎まで、延々と茶畑が続く道を駆け抜ける

日没寸前の時間に枕崎に到着して、すぐに目的のキャンプ場へ向かった。しかし、途中の道は通行止めだし、結局キャンプ場を見つけることは叶わず、見知らぬ枕崎の地で呆気なく途方に暮れてしまった。仕方なく野宿をするため、西にバイクを走らせるが、国道に街灯は一切なく真っ暗なうえ、しばらく走っても良い場所が見つからない。少しばかり考えた結果、この辺りでの宿泊は諦めて、鹿児島市内へ戻ることにした。

若干明かりのあったこの場所で、しばし行先を考える…

深夜、車も殆ど走らない国道を淡々と走る。幸いにも眠気に襲われることはなく、1時間ほどで再び鹿児島の市街地へ戻ってきた。とても遅い3G回線のスマホで必死に宿泊できる場所を調べ、ネットカフェに泊まることにした。
いわゆるネットカフェを利用することは初めてだったが、当時の私は18歳でギリギリ深夜に一人で滞在できる年齢になっていたので、受付も問題なく手続きすることができて、無事にこの夜をしのげたのであった。もちろん漫画など読みあさる余裕など無く、速攻で爆睡であったが…

・2013年3月16日(土)-旅行6日目

 ネットカフェという場所は利用時間が長くなるほど料金も高くなるシステムで、比較的割安な8時間パックを利用した。そんな経緯で、この日は眠い目をこすりながら早朝から移動を開始する。

桜島丸 鹿児島港から対岸の桜島までを15分で結ぶ
船内では、名物と言われているうどんを食す

桜島フェリーに乗って、対岸の大隅半島を目指した。桜島フェリーは24時間運行していて、早朝でもすぐに乗船できる便利な路線だった。フェリーから外を眺めていると、桜島の奥から朝日が昇ってきた。今日も素晴らしく快晴だ。

桜島の展望台から

桜島の東側の国道には目に見えて火山灰が溜まっていた。バイクで走るとそれを巻き上げて、車体の後部が真っ黒になった。道路の脇の地形も固まった溶岩で、自然の雄大さを体感する。昨日から汚くも風呂に入っていない。通りすがりに朝から営業している温泉を見つけて入った。

天然水「財宝」の温泉に入浴

ここの温泉は長旅で疲れた体に効いたのか、気持ちが良くてついつい長居してしまった。
相変わらず雲ひとつない青空の下、気温も上がってバイクで走るには最高の天気。ここまで来ると景色も南国感が満載!

「佐多岬」を目指して快走!

九州本土最南端の地である「佐多岬」を目指して、ひたすらバイクを走らせた。桜島から佐多岬までの道のりは長く、結構な距離を走ったが、その道からの景色は私にとって全てが新鮮で、いつまでも飽きることは無かった。
まるで(行った事は無いけれど)東南アジアの国々のような、南国の植物が生い茂る道を走り抜けると、ついに地図で何度も見た憧れの地、佐多岬に到達を果たした。

今は無き北緯31度線上の茶色い看板
2013年3月16日(土) 13時 佐多岬に到着

その地は私の住んでいる関西地方では見たこと無いような、南国っぽい植物で覆われた世界だった。この日の気温も20℃に達し、しばらく歩いていると汗ばむほどの陽気で、昨日まで寒さに震えていたのが嘘みたいに思える。

ここから見る風景・植物・大海原… 全てが新鮮で美しかった佐多岬

駐車場から続く遊歩道は工事中で、突端まで行くことは叶わなかったが、それでもこの地は少年の私に素晴らしい景色を見せてくれた。

ここまで、自分の運転で思いのままバイクを走らせ、ここ最南端の地にたどり着いたこと。それは何年もたった今でも思い出すことが出来る。最もこの旅に出て良かったと思える瞬間でした。

有料道路だった頃の朽ち果てた料金所が建物だけ残されている…
10年後、この写真右側のジャングルが開拓されて、きれいな無料キャンプ場がオープンします☆

佐多岬には2時間ほどの滞在。最南端の地に到達したという達成感に浸りながら…
折り返し地点を過ぎ、これからこの旅は少しづつ家に近づくことになるが、道のりはまだまだ長いのである。

この辺りの桜は既に葉桜になり始めていた
南九州の海岸線とともに北上!

佐多岬から1時間半ほどの場所にある鹿屋市のライダーハウス兼キャンプ場「ローズヒルかのや」を今夜の宿泊地とするべく、電話をかけてみるが繋がらない。とりあえず行ってみることに。今となって思うのは何とも無謀な旅である… 目的の住所に到着すると、そこは周りに人家など全くなく、森の中に1軒の民家と小さなログハウスが数軒あるのみの場所だった。
キャンプ場っぽい場所にログハウスがあったので、ここで間違いはなさそうだが、恐る恐る民家のインターホンを鳴らした。

暫くして、ライダーハウスを運営している主人の奥さんが応対してくれた。普段はライダーハウスの対応はしていないようだったが、ログハウスへ案内してくれた。ログハウスは2畳ほどで小さかったが、テントと違ってしっかりした建物であるという安心感なのか、何と無く落ち着いた空間だった。
1時間ほどして、 ライダーハウスの主人が帰ってきた。急な来客(私)が来たから、車を飛ばして戻って来たとのこと。暗くなってきた頃に突然やってきたにも関わらず、これまでの旅の話などしながら、暖かく迎え入れてくれたことに感謝しかない。

森の中、静かなる夜を過ごす…

・2013年3月17日(日) – 旅行7日目

 この日は雨の天気予報が出ていたが、朝の天気は快晴だった。日程的にも場所的にも折り返し地点になるので、無事に帰れるよう気をつけながら残りの旅も楽しみたい。ライダーハウスの夫婦に見送られながら、 今日も九州の大地を快走するのであった。

道中、ほぼ満開の桜を発見

宮崎の南国感溢れる道路を通過してからは山を越えて高千穂町を通り、再び熊本県に入って阿蘇に向かった。そして、天気も予報通り雨が降る。しかも結構な土砂降りに加えて、強風と霧に包まれて視界も悪かった。幹線道路を中心に移動してきたつもりだったが、天気の悪い日曜日だからか、この日の車の交通量は極めて少なく感じた。

やっぱり雨だとキャンプは厳しいので、今日もライダーハウスに泊まりたいところ。雨を凌げる橋の下で地図とにらめっこしながら今日この後の旅の計画を立てる。比較的現在地から近かった南阿蘇村の「阿蘇ツーリングブリッジ」を宿泊先とするべく、電話を掛けた。今回は無事に繋がり、予約が出来たので一安心。

日本一長い駅名「 南阿蘇水の生まれる里白水高原」
(みなみあそみずのうまれるさとはくすいこうげん)

宿泊先を確保して安心したので、雨の阿蘇を少しばかり徘徊した。鉄道で来てないのに、日本一長い鉄道の駅の前で記念撮影。

3月、まだバイクはオフシーズンだからだろう。今日の宿も宿泊者は私一人だったが、無事に雨風を凌げる空間に入ることができた。 広々としたエアコン付きの部屋で、暖かく快適に寝ることができたが、残念ながら明日の天気予報も雨となっていた…

西日本編:8~10日目に続く…