・2015年3月8日(日) – 14日目
那覇のネットカフェで朝を迎える。今日はいよいよさらに南の島、宮古島に向かう日だ。
宮古島へ渡る手段は航空機しか無いので、バイクは昨日の夜に空港の駐輪場に放置してきた。もはやバイクの旅では無いのだが、一応「日本一周の旅」であるからには、たとえ自分のバイクで無くでも、日本で最も南にある地域である先島諸島の土を踏んでおきたいと思った。また、この日の約2ヶ月前に「伊良部大橋」という、無料で通行可能な橋としては日本で最も長い橋が開通したばかりらしいので、できたてほやほやの橋を是非とも渡っておきたいと思ったのも、宮古島行きを決めたもう一つの理由である。
午前8時、まだ有効期限内の「ゆいレール2日乗車券」を使って、モノレールで那覇空港へ移動を始めた。那覇空港から宮古空港までは、LCCのスカイマークを利用した。出発の少し前にチケットを予約したので、片道4,000円(往復8,000円)とフェリー並みの格安料金で移動することが出来た。
窓口でチケットを発券し、私はかなりビビりながら保安検査場へ向かう。というのも、飛行機に乗るのなんて久しぶりで、しかも一人で乗るのは初めてだ。搭乗までの一連の人の流れに付いて行き、検査場を通過した。荷物が少なかったのもあり、スムーズに機内の座席までたどり着くことが出来て、これでひと安心だ。
那覇空港から宮古空港までの所要時間は約50分。座席に着いてからはあっという間で、離陸して高度が上がりきったなと思ったら、すぐに着陸といった感じだった。数百キロの距離を一瞬で移動できる。これまでずっとバイクとフェリーの旅を続けてきたので、やっぱり飛行機は早いなぁ。とか思いながら、宮古島の地に足を踏み入れた。
宮古空港には離島らしく小さなプロペラ機が沢山駐機していて、その内の1台がちょうど離陸するタイミングだった。パラパラパラ…と独特の音を響かせて大空へ飛んで行ったのが印象に残っている。
午前11時半、予約していたレンタカーを借りるため、車屋の送迎で移動した。
宮古島の中心市街地は平良(ひらら)という、島の北西にある地域だ。この地域にある車屋で、24時間3,200円の格安料金でレンタカーを借りた。車種は少し古めのホンダ ライフ(軽自動車)だった。パワーは無く、私のバイク以上に非力だが、狭い島内を移動するには十分で、車内も広くて綺麗だ。
昔懐かしの形をしたポストがある
こうして移動手段をゲットした私は、ノロノロと島内へ繰り出したのであった。 とりあえず「宮古島市総合博物館」を見学。日曜日だが誰も居なく、ほぼ無人状態の博物館で、宮古島ならではの歴史、自然を学んだ。
続いては、早くも開通したばかりの「伊良部大橋」を渡るべく、西へ車を走らせ、橋の手前で記念撮影。
残念な天気と出来立てほやほやの「伊良部大橋」
船を通すため、真ん中付近が高くなっている
間近で見ると、その橋の長さが良く分かった。遥か先の伊良部島(いらぶじま)まで、曲線を描きながら橋が続いている。晴れていればさぞ、日本国内とは思えない素晴らしい景色が広がっているのだろうが、現実はまあ安定の曇天で、いつ雨がふって来てもおかしくない薄暗さだ。
しかし、今の私の移動手段は車。バイクとは違って雨なんぞ全く問題無いのだ。そう思うと、もうやけくそでいつでも雨よ降れ!と思ったのであった。
海の透明度はやっぱり高くて綺麗だ
再び車に乗り込み、長~い伊良部大橋を渡った。入り口に立った時は凄く長い橋に感じたが、車で走り出すとものの数分で渡り終えてしまった。
こうして伊良部島に上陸したが、特に行くところは無いので、適当に島内を徘徊(ドライブ)した。
伊良部島と下地島
伊良部島はこの前行った伊江島みたく平らな島だが、面積は約30k㎡で、伊江島の約1.5倍の広さを誇っている。隣の下地島(しもじしま)とは、地図で見ると伊良部島と繋がっているように見えるが、陸続きでは無い別の島だ。まあ、幾つもの小さな橋で両島は結ばれているので、別の島という感覚は薄いだろう。
一時間ほどドライブした後、再び伊良部大橋を渡って宮古島に戻った。宮古島には、島の中央付近に「宮古島温泉」という、島内で1箇所だけの日帰り温泉施設があった。入浴料金は900円(島外者)と結構高めであったが、昨日から風呂に入ってなかったので、ここを利用した。中は普通の温泉施設だったが、日曜日の夕方でも空いていて、気持ちよく利用できたので良かった。
砂だけの島?
温泉から出た頃にはすっかり真っ暗だ。今晩の宿は決めていなかったが、いつものごとく宿泊費をケチるべく、初めての車中泊を決行することにした。
この島には24時間営業のイオンがあった。一面の闇の中、雨も降っている島内で車を走らせ、広大なイオンタウンの駐車場に到着。とりあえず、隣接するマクドナルドで夕食を食らう。本州のマクドナルドと違って、店内はカラフルで南国のトロピカルな雰囲気がたっぷり出ている。空いていたので、明日の予定を考えながら2時間ほど居座り、イオンで少しばかりの買い出しを済ませ、車内に篭城した。
【14日目移動距離・出費】
那覇→宮古島→伊良部島→宮古島:126km(レンタカーの走行距離)
出費:15,126円 ※累計:79,264円
(那覇空港~宮古空港航空券(往復):8,000、ネットカフェ宿泊費:1,650円、レンタカー料金:3,200、食費:1,268、温泉:900円、その他:108円)
・2015年3月9日(月) – 15日目
♪長れる季節の真~ん中で~ ふと日の長さを感じます~
今日は3月9日、沖縄本島の某牛丼チェーン店にいた時に流れていたレミオロメンの名曲「3月9日」を思い出して、頭の中でこの曲が流れた。早いもので、自宅を発ってから2週間が経過したが、旅の途中はやっぱり時間の流れが遅くなるようで、感覚ではもう数ヶ月も放浪している気分に浸っている。
宮古島で借りたレンタカーの車内、イオンの駐車場で向かえた14回目の朝は、相変わらず曇天だったが、薄曇りで時々日が差していたので、昨日よりかは旅行を楽しめそうな天気だ。
この夜は、私にとって初めての車中泊を経験したが、慣れないせいか、途中で何回も目を覚ましてしまったが、気温がちょうど良かったのもあり、特に苦しむことも無く一夜を明かすことが出来た。車での貧乏旅行なら、毎晩車中泊するのもありだなぁと感じた経験であった。
車屋に行ってレンタカーを返却する必要があるが、開店時間まであと数時間あるので、また適当に島内を徘徊することにした。
宮古島の南西部を走る。誰もいない、辺り一面にさとうきび畑が広がるのどかな場所、そこに私は車を停めて、さっきテイクアウトした朝マックを食した。この場所でまだ温かいうちに食べるバーガーの味は、いつもより少しだけ旨く感じた気がした。
移動手段をバイクにチェンジ
午前11時になったので、車屋に行ってレンタカーを返却した。その足で私は少しばかり路線バスに乗って、今度はバイク屋に向かった。
平良港近くのバイク屋で、バイクとヘルメットをレンタルした。ヘルメットは那覇から自分の持ってくれば良かったのだが、移動手段がLCCで手荷物の追加料金が掛かるため、借りてもそんなに料金に差は無かったのだ。
そして、バイク屋から出てきたバイクは、私が那覇まで旅してきた愛車と偶然にも同じ車種であった。(こっちは大きな傷もなくピカピカだが…) 運転し慣れたバイクで、安心快適に宮古島の旅を楽しめそうで何よりだ。
遠浅の海はどこまでもエメラルドグリーンな色が続く…
バイクを借りてからは天気も回復して気温も上昇。爽やかな南国の風を感じながら、宮古島一周の旅に出発だ。
島の北側には「池間大橋(いけまおおはし)」(全長:1,425m)が架かっていて、宮古島と池間島が結ばれている。橋を渡って、1周しても10分かからないほど小さな池間島をぐるっと周って、また宮古島へ戻る。そんな小さな旅だったが、それでもバイクで見知らぬ土地を走っているだけで楽しいものだ。
道中で発見! 謎の穴
青空に映える灯台
宮古島の東海岸を快走。道中にはリゾートホテルやゴルフ場があったりして、まさにリゾートアイランドといった風景だ。池間島から50分ほど走った所で、島の最東端にあたる「東平安名崎(ひがしへんなざき)」に到着。
「ひがしへんなざき」という地名であるが、決して変な岬では無く、美しい景勝地であった。この岬の周囲に橋や他の島は無く、正面には大きな海、振り返ると平らな宮古島を一望できる開放的な場所だ。駐車場から灯台方面に続く遊歩道を散歩気分で一周した。
続いては宮古島の南海岸を走り、島に架かる3本目の橋である「来間大橋(くるまおおはし)」を目指す。
まるでゲームの世界に入ったかのような洞窟だ
南海岸を走行中、「城辺町の友利あま弁」という場所に目が留まって立ち寄った。
20mほどの深さを誇る自然洞窟の底には古くから水が湧いていて、ほんの50年前まではこの湧水が飲み水を始めとする貴重な生活用水をなっていたらしい。毎日このダンジョンみたいな深い洞窟を水を抱えて登っていたかと思うと、当時の人々の苦労が伺えるのである。
地底から空を見上げる
ちょっとした探検気分を味わいつつ、宮古島で海上に架かる3本目の橋である来間大橋に到着。先ほど渡った池間大橋よりも少し長い、全長1,690mの立派な橋だ。バイクで一気に橋の上を駆け抜け、来間島へ。
来間島は周囲3~4kmほどの小さな島で、あっという間に一周できてしまう島だったが、島内の道路はどこも農道のような感じで結構荒れている。午前中に同じくバイクで一周した池間島と比べて面積は小さいが、難易度は来間島の方が高いようだ。
真っ直ぐに延びる「来間大橋」
半時計周りに来間島を一周して、島の北側にある「竜宮城展望台」へ。確かに竜宮城?のような見た目の展望台の3階から、目の前に広がる美しい海の景色と、さっき渡ってきた来間大橋の全景を独り占めだ。
再び宮古島へ戻る帰り道の途中には、全長1mは超えているであろう長~いヘビが、時速1kmにも満たない亀並みの速度でゆっくりと横断し、私のバイクの進路を塞いだ。
土の溜まった道路を、にゅるにゅるっとヘビが横切る
砂と土まみれの道にヘビ、中々ワイルドな風景を見せてくれた来間島を去り、 平良の市街地方面へ向かう。今日の宿は、昨日、レンタカーで渡った伊良部大橋の更に先にある下地島に予約した。伊良部島、下地島共に大きなお店は無さそうだったので、平良で食事などの買い出しを済ませてから宿に向かいたい。
どこに行っても、海の色が透き通っていて綺麗だ
買い出しを済ませると時刻はもう18時、夕日を見ながら伊良部大橋を渡れるかと思ったが、残念ながら、夕日の方向は暗黒の雲がそびえていた。
バイクで伊良部大橋を渡って感じたのは、感動の景色…では無く、今にも吹き飛ばらせそうな強風である。プォーーーっと南西の方向から吹く風は、真っ直ぐ走っているのにバイクは常に左に傾きながら走っている状態だ。
橋の通貨に掛かる時間は5分ほどであったが、終始ビビりながらの地獄の5分間は、とても長く感じたのであった。何とか生還して、完全に暗くなる前に、本日から2連泊する宿「下地島コーラルホテル」に到着した。
ここは沖縄の離島でネットカフェも無く、キャンプ用品も那覇に置いてきたので、贅沢にもこの「バイク日本一周旅」シリーズでは初めてのホテル泊を選択。2泊朝食付きで1万円以下と安さで選択した宿だったが、快適な室内で、優雅に? 離島での夜をのんびりと過ごした。
【15日目移動距離・出費】
宮古島→池間島→東平安名崎→来間島→下地島:222km(レンタカー:50km、レンタルバイク:172km)
出費:21,947円(レンタカーガソリン代:1,702円、レンタルバイク(48時間)代:7,000円、宿泊費:9,640円、食費:2,785円、バス代:220円、その他:600円)
2015年3月10日(火) – 16日目
下地島のホテルの一室で迎えた朝は、何だか爽やかな気分だ。朝起きて、とりあえず風呂に入ってからのんびりと朝食を食べる。
私が宿泊している「下地島コーラルホテル」のすぐ近くには、下地島空港という3,000m級の滑走路を持つ空港があるのだが、2015年現在は旅客期の運航は行われておらず、辺りはとても空港の目の前とは思えない静けさだ。
連泊なので部屋に荷物を放置して、遅めの10時過ぎにホテルを出発。今日もレンタルバイクでのんびりと離島見物を楽しみたいところだ。
下地島空港の外側には道路が通っており、海と空港の間をぐるっと一周してみる。誰もいない海と道路と滑走路、非現実的な風景がそこには広がっていた。そんな場所を走っていると、「通り池→」という看板があったので、→の方向はジャングルだったが、向かってみた。
だたの広場みたいな駐車場にバイクを停めて、きれいに整備された並木道を5分ほど歩くと、一気に視界が広がる。その先に見える2つの池が「下地島の通り池」らしい。この池は地底で海と繋がっていると言うので、そう思うと何だか神秘的だ。
通り池の周りは、私が2年前の「バイク日本一周旅(西日本編)」で大雨の中訪れた、山口県の秋吉台みたいなカルストの地形が広がっている。天気が良い日なら、この風景を見るだけでも下地島を訪れる価値は十分にあるだろう。
下地島を一周して、ホテルの近くまで戻って来た。次はすぐ隣の島、伊良部島を一周したい。
まるで小川に架かっているような小さな橋を渡って、下地島から伊良部島に入る。時計回りに海沿いを駆けて、時々バイクを停めて島の風景を見る。
いよいよこの旅の終わりも見えてきた中、私は昼飯を食べるのも忘れて、見知らぬ島の風景をこの目と心に焼き付けた。急な坂道をトロトロとバイクで上がり、長~い伊良部大橋の近くにある小さな山、牧山に登った。
牧山からの風景
山を下った後は、昨日よりは風が弱くなって走りやすくなった伊良部大橋をまた渡って、宮古島に再上陸。平良で遅めの昼飯を食らう。
伊良部大橋(伊良部島側から)
宮古島は昨日まででだいたい回ったので、適当に海岸線を走ってまた伊良部島、下地島に戻り、16時にホテルに到着。洗濯したり風呂入ったり飯食ったりした後は、今日までの旅の軌跡を振り返って、穏やかだった一日が終わった。
【16日目移動距離・出費】
下地島→伊良部島→宮古島(平良)→下地島:108km(レンタルバイクの走行距離)
出費:2,200円(レンタルバイクガソリン代:847円、食費:1,353円)
※累計:100,337円
ここで、ついに出費が10万円を超えてしまった。残金はまだ5万円ほどあるが、ここは遠い南の島だ。金の心配も出てきたが、まだまだ旅は続く、残金を気にしつつも、余り心配はせずに残りの旅も楽しみたいところだ。