【バイク日本一周旅】東日本編(12~15日目:北海道一周その3)

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・2014年8月24日(日) – 12日目

この日の朝は爽やかな目覚めだった。起床とともに太陽の光を浴びることができたからだ。
雲量は多かったが、間違いなく天気は晴れている。朝から晴れているのは北海道に上陸してからは初めてかも知れない。僕は雨男なのか? そう思っていた中でようやく訪れた晴れの日。これはもうすぐにでも走り出したい衝動に駆られ、バイクに荷物をくくり付け、早朝から軽やかに出発したのであった。

牧場の牛さん達を横目に、「ミルクロード」と呼ばれる牧場地帯の農道を走る。しばらく走った後、やがて海が視界に広がった。この海がこれから福井県まで長~いお付き合いになるであろう日本海だ。最初の景色は、サロベツ原野と呼ばれる何も無い平野を駆け抜ける。

何も無い草原と青空、そしてそこを貫く一本道。同じ日本国内とはいえ、僕の住んでいる大阪とは全く異なる風景が広がっている。
この旅が初めてのバイクで走った北海道であったので、この日の風景は今でも記憶に良く残っている。この記憶を思い出すと、また北海道を走りたくなるのである。

やがて、たくさんの風車が立ち並ぶ場所に着いた。後に知ったのだが、ここは「オトンルイ風力発電所」という場所で、バイク乗りの間では有名なスポットらしい。デッカい風車と何も無い草原が広がる風景は、北海道に来たことを強く実感させてくれた。

写真の左側にかすかに見えるのが離島の利尻島だ。半分雲で隠れているが、富士山に似た形の山「利尻富士」がそびえ立っている。いつの日か、あの島にも上陸してバイクで駆けてみたい。そう思わせてくれる景色であった。

晴れの天気はやはり気持ちの良いものだ。心も軽やかになった気がするし、旅の間はずっと晴れていて欲しい。そう思うが、現実は雨ばっかり… 思い通りには行かないものである。
天塩、遠別、初山別、羽幌、苫前…と日本海沿いにある幾つもの小さな街を通り過ぎ、早くも海に飽きたので、少し内陸の道を選んで走った。

元々少なかった交通量は内陸に入ると更に少なくなり、快適にバイクを走らせることができた。今日は旭川辺りで1泊することにして、今度は永遠と続く山道を単独で走った。

16時には旭川の市街地に入った。まだ早い時刻ではあったが、天気も曇ってきたのでどっかのラーメン店(名前と場所は忘れた)で早めの夕飯を食し、ネットカフェで1泊することにした。(当時の僕に「道具あるんだからキャンプしろ」と言いたいところであるが、この時はキャンプ初心者で何かとビビっていたのだろう…)
個室は狭いが、安価で8~12時間滞在できてドリンクも飲み放題、狭いところが好きな私にとっては、ネットカフェ案外快適に過ごせる場所なのであった。

【12日目移動距離・出費】
稚内→苫前→ 旭川:290km
出費:1,000円
(ガソリン代:1,000、食費:964)

・2014年8月25日(月) – 13日目  

 泊まったネットカフェは滞在時間が12時間を越えると別料金が発生するため、いつものごとく宿泊費をケチり、早朝5時からバイクを走らせることとなった。
8月とは言え、ここは北海道の旭川。平均気温は大阪の10月頃と同じなので、バイクで長距離を走ると結構冷えてくるのだ。

出発前にネットカフェのパソコンで天気予報を確認したところ、内陸部は雲行きが怪しかったので、まずは増毛町を目指し、そこから今日の目的地である札幌を目指して日本海沿いを走るルートを選定した。
そのお陰で、今日も気持ちの良い青空の下、バイクを走らせることができた。

この辺りの風景はどこも広大な田園地帯が広がっていて、北海道らしさを十分に感じられる。途中の北竜町は「ひまわりの里」と呼ばれるほどのひまわりの生産地らしく、もう満開の季節は終わっていたが、広大なひまわり畑の中に立ち、ここでも北海道の雄大さを感じる。

もう8月も終わりに近づいている時期ではあるが、青空をバックに咲き誇るひまわりを見て夏を感じた。
ここから日本海沿いへ抜けるルートとして、道道94号線を選択した。超マイナーな道で周辺に民家、通行車両なしの区間が長らく続いた。そして山を越え、古びた線路を横断した先、視界に日本海が広がった。

ここからは札幌を目指し、日本海沿いに南下していく。天気は良いが、海は波が高くて荒れている。そんな海に沈んでいく断崖絶壁の風景の中、国道231号線を走る。

国道から少し登った所に「雄冬岬展望台」なる場所を発見したので立ち寄ってみる。急斜面を整備された階段で難なく駆け上がり、巨岩、奇岩がゴロゴロした場所の先にあった展望台からは、日本海を見渡す絶景が広がっていた。

ここから先は、さらに海岸線ギリギリを貫く道を走る。快晴で気温22℃と快適な天候だったこともあり、快調にバイクは進む。気がつけば道は片側2車線になり、石狩川を渡ると札幌の市街地はすぐそこだ。

14時には札幌市内に入り、今日は親族宅で1泊。
近所のスーパー銭湯に行ったり、夕食を食べにいったりで、今日ばかりは孤独から開放された夜であった。

【13日目移動距離・出費】
旭川→増毛→札幌:290km
出費:3,352円
(ガソリン代:472、宿泊費:2,580、食費:300)

・2014年8月26日(火) – 14日目  

ゆったり8時起床から、今日はたっぷりの朝食を食べて体のチャージは完璧だ。
10時ちょうどに札幌を出発。国道36号線に入り、飛行機を見に行くのとお土産を買うため新千歳空港へ。

8月の観光シーズンだからか、空港周辺は人と車で溢れかえっていたが、 バイクは空港駐車場の片隅に200円の駐車料金で停めることができた。
大空へと飛び立っていく飛行機を見るのは、子供の頃と変わらず何となく楽しくて、空港ターミナルの屋上から長い間、ぼんやりと空を眺めていた。

今、この空港から大阪行きの飛行機に乗れば、数時間後には家に帰ることができる。でも、私はバイクで来ている。陸路で1,500km以上走らなければならず、124ccの排気量なので高速道路も走ることが許されない。
けれども、それが苦痛とは思わず、むしろこれからの長い道のりの途中には何が待っているのか楽しみだった。新たな発見があり、移動も含めて全ての時間を楽しむことができる。この時はまだ学生で、時間的にとても余裕があったから出来た旅なのかも知れないが、僕にとってバイクで旅をする理由とは、そういうことなのかも知れない。

今日は8月26日、夏休みの終わりも近づいている。あまりのんびりもしていられないので、お土産を買って軽く昼食を食べ、空港を後にした。
静かな森の中を抜け、支笏湖、洞爺湖の湖畔を走る。洞爺湖沿いの山道を駆け上がり、「そうべつ公園洞爺湖展望台」から洞爺湖と昭和新山を見る。

時刻は16時半、ホテルにチェックインする観光客で賑わっている湖畔の温泉街を通過して、長くて寒~いトンネルを抜けるとそこは海の見える風景。この旅では根室以来の太平洋とご対面だ。
夕方で混雑気味の国道37号線を走ること約30分。長万部町の国道5号線との交差点に到着。1週間前、かにめしを食べた後にここからニセコ方面に向かって走ったのを覚えている。せたな町、江差町など道南地方の西側に行けていないが、これでだいたい北海道一周は達成だ。

今日は長万部町にある「長万部公園キャンプ場」にテントを張ることにした。時刻は17時半、日没ギリギリにキャンプ場に到着し、受付を済ませて急ぎ気味に荷物を降ろし、適当な場所で設営を始めた。

テントの設営が完了する頃には、辺りはもう真っ暗だった。他の利用者も少なく、静けさが不気味で、僕は便所に行くのにもビビっていた。
少しばかりの買い置きの夕食を食べ、風呂も入らずに就寝。夕方の雲行きが怪しかったが、雨は降らなかったのは幸いだ。

【14日目移動距離・出費】
札幌 →千歳→洞爺湖→長万部 :230km
出費:2,555円
(宿泊費:500、駐車料金:200、食費:423、お土産代:1,432)

・2014年8月27日(水) – 15日目

昨晩に早く寝たのもあり、5時起床。空はもう明るくなっていたが、外に出ると寒い。8月とはいえ、ここは北海道。12℃まで気温が下がっていた。

やることもないので、早朝からテントを片付け、午前6時半に出発。今日はまず函館を目指し、フェリーで津軽海峡を渡って、いよいよ北の大地北海道とおさらばの予定だ。
キャンプ場から坂道を下り、国道5号線に入れば流れはハイペース。一気に南の方向へと距離を稼いでいく。

変な名前の道の駅「YOU・遊・もり」

天気は今日も晴れ。天気予報を見てもこの先しばらくは晴れの日が続く模様で、これでもう雨男からは卒業だ。
晴れの大地を快走して、大沼国定公園を過ぎたところで国道5号線を外れ、「城岱スカイライン」という気持ちの良いワインディングロードを走り抜け、白岱牧場(しろたいぼくじょう)展望台に立つ。平日の朝だったこともあってか、この辺りに人の気配はなく、眼下に広がる絶景を独り占めだ。遠くは霞んでいて良く見えなかったが、函館の市街地を一望することができた。

朝飯を食っていなかったので、腹が減ってきた。「ラッキーピエロ」というローカルなハンバーガーショップが函館周辺にのみ存在するようなので、そこで遅めの朝食とすることにした。
開店時間は10時半からで、少し時間があったので、通りがかりのコインランドリーで大量の汚い洗濯物を洗った。これでちょうど良い時間になったので、函館港近くの ラッキーピエロ港北大前店に入った。

開店して5分くらいしかたっていないが、既に何組か入店済みで、やはり人気店のようだ。そこそこ狭い店内のいたるところにネオンが輝いていて、往年のアメリカを感じさせる雰囲気だ。ハンバーガーはモ○バーガーと似ている感じだが、ポテトがマグカップに詰め込まれている斬新なスタイルだ。個人的にはモ○バーガーよりこっちの方が旨いかも知れない。

そして腹も満たされたところで、津軽海峡を渡るべく函館港へ向かう。名残惜しいが、いよいよ北の台地を去るときが来たのだ。
乗船するフェリーは往路と同じ津軽海峡フェリーだが、今度の行先は青森港。正午ピッタリに出航するびなす号に乗船。約3時間半の船旅だ。

フェリー最上階の展望デッキに上がり、函館の町と津軽海峡を見る。
この旅に出てから2週間、旅に出ると時の流れが遅く感じて、自分の中ではもう1ヶ月以上が経ったような感覚を味わっている。北海道には10日間の滞在となったが、広大すぎてこれでも旅行の時間が全然足りなかったようだ。

来年からは社会人となり、もう長旅をするのは難しいかも知れない。しかしいつかまた、もっと大きなバイクで北の大地を自由に旅してみたい。そんなことを心の中で誓いながら、遠ざかっていく函館の街をいつまでも眺めていた…

冷えてきたので船内の休憩室でひと休み。横になったら案の定すぐに爆睡してしまい、起きる頃には青森港に接岸する直前だった。

定刻通り15時半にフェリーは青森港に到着し、10日ぶりに本州の地に降りたった。日没までまだ時間があったので、十和田湖に寄ってみることにした。

十和田湖には国道102号線を走ったが、その道は深い森の中を国道らしからぬ急坂、急カーブで登っていく難易度の高い道であった。思いのほか時間が掛かってしまい、辺りはもう暗くなりかけていたが、何とか十和田湖の姿をこの目に収めた。
この辺りの道は街灯も一切無く、日没時刻を過ぎると一面の闇が広がっていた。
国道454号線で湖畔を走る。道路沿いにある旅館の前だけは暖かくて高級感のある明かりが灯っていたが、その他はバイクのライトが前を僅かに照らすだけだった。

暗闇の中を延々と走り抜け、麓に降りたころには既に19時を過ぎていたが、近くに21時まで営業している温泉施設があったので、そこでひとっ風呂。すっかり夜も更けてしまったので、本日は大館市にあるネットカフェに入り、北海道から秋田県まで大移動の一日が終わった。
自宅まで残りの距離は約1,000km。まだまだ先は長いが、私に残された夏休みはあと4日しかないので、1日あたり最低250kmは走行する必要がある。
これまでのペースで考えると、先を急ぐことは無いが、余りのんびりもしていられない。無事に帰れるよう、 明日からは気合と注意力をさらに高めて、残りの旅路を駆け抜けたい。

【15日目移動距離・出費】
長万部→函館→青森→十和田湖→大館:300km
出費:9,170円
(フェリー料金:4,720、ガソリン代:1,070、食費:1,890、風呂:260、洗濯代:600、その他:630)

東日本編(16~18日目:秋田から自宅へ縦断1,000km)へ続く…